本屋に行くと、ずらりと並んだ自己啓発の本や、啓蒙書、経営者としての指南書などが目に付く。
一寸先は闇と言うこの人生に、不安がよぎり、何かにつかまっているような安心感がこの本に書いてあるとしたら、それはそれで高い買い物でもない。
その本を読んでも読まなくても、持っているだけで効き目があるような気がしないでもない。
最近はそういうのをほとんど読まなくなってしまって、かといって、捨てるのももったいない。
タンスの上にホコリをかぶったまま積んである。
金言や名言集、立身出世の物語もこうなっては宝の持ち腐れだ。
時折り、猫がその上で横になっているらしく、積み上げた本が崩れて、段差になっている。
猫はこれを上手く使い、タンスからタンスへ飛び移るようだ。
しかしね、だいたい人様の言うとうりの人生などは、窮屈だろう。
書いてあるように試しても、長続きしないもんだ。
結局のところ、僕なんかもこの人生を頼りなく、ここまで来てしまった。
それは、あたかも広い海の只中にいて、つかまる物も無く、立ち泳ぎしながら、こっちへ流され、あっちへ流されという実に頼りないものだ。
まあ、今となっては、こうして元気にいられるのだから、良かったじゃないかと思っている。
最近は新聞がいい。紙面をゆっくり読み、忘れてしまった漢字を書いて見たりする。
あらかた世間の事が分かる。啓発の原点がここにあるじゃないか。
それにね、読んだ後の新聞紙。その用途はとても広い。
本店厨房にて