「須藤悦男君へ」
この度は退職ということで、長いあいだご苦労様でした。
月日の流れはとてもはやく、新人の頃をつい思い出します。
君は当初、覚束ない手つきで“見習いのお兄さん”といったイメージがありましたが、予想外に根気がある。
そしてコツコツと真面目に働き、研究を重ねておられました。
はたから見ていて、その愚直ともいえる熱心な根性においては、この自分もおよばないとあきらめた程です。
また、新館の弟なども、時には私心を捨てて君や他のスタッフを平等に分けへだてもなくその愛情をそそいだのも、
考えようによってが君の持つ人徳がそうさせたかもしれない。
いづれにしても、君は良い師匠の元で働くことができて幸せであったとおもう。
さて、これより遠く離れた熊本の地において、いよいよ来春には、腕に覚えた自分の店を開業する訳です。
我々も東京にいながらにして、その成功が待ち遠しい。
ついてはかの地、熊本において、地元の皆様にうんと鍛えて頂いて、そして愛される店に、ぜひ成ってもらいたい。
そういえば、君の将来の夢。
とうとう気きそこねたが、叶うといいな。
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