厚い銀色の筋、シルバースキンのような全体を覆っている硬い筋を丁寧に取り除く。
その中にきれいなマグロの中とろの色をした赤身とも霜降りとも区別がつかない素晴らしい肉が表れる。
さらに、そのきれいに剥いた肉から特上、上、並に柵わけすると、“ほんの少し特上”、“幾分多めの並”、“その間を少しとって上”と分かれる。
見方を二通りみれば、高いお金を出して仕入れたのだから全部特上がいいと思わなくもない。
カマボコのようにどこを切っても全部同じ断面で味も均等であるとなおいい。
ただその一方で、並がまずいか、と言うものでもない。
並には並の味があり、上にも特上にもそれぞれ味の特性がある。
良い牛は並もいい味があるし、脂も融けやすくお腹に優しい。
しかし、神様は上手に創造したものだ。
厚い銀色の筋、その中に美しい赤身とも霜降りとも区別がつかない素晴らしい肉、この素晴らしい肉の一片をまるで保護するかのようだ。
牛肉は何年も手に触れて慣れているはずなのに、いまだによくわからない。
神秘的なものだと思う。
表と裏、光と影、この厚い銀色の筋の中に美しい赤身とも霜降りとも区別がつかない素晴らしい肉。
牛肉は不思議であるがとてもおいしい。