厨房思案 第114話 「なんとかなるさ」

コロナ禍で倒産や廃業を聞くたびにため息が出るが、そういう中でも資金をやり繰りして、経営を続けるところもあれば、業態転換や商売変えをして、したたかに新しい事業を始めるところもある。

僕などは長年このスタイルに従事してきたから、なかなか頭がフレキシブルでない。 あるものを捨てるというのは難しい。 弁解するわけではないが、アイデアや発想と言うものは無理矢理に頭を絞って出すというより、案外自然に湧き上がることがあり、それにしたがって、新案のことなど はなから考えたことがない。

それに、ヤキニクというスタイルは、古くからもうとっくに完成されていて、このパフォーマンス自体がこの先多少の進化やマイナーチェンジがあろうと、根幹は消えて無くなるという風には思えないのである。

昔、ウイスキーの宣伝に(何も足さない、何も引かない)みたいなコピーがあったけど、それそれ、それなんだよ!と言いたい。 ヤキニクは化学かもしらん。 僕が捨てようが続けようが関係なく、化学式のように現存する。 とはいえ、好きなことを信ずると言う事と、経営を続けるということの相対する関係は僕を苦しめる。

がしかし、好きなことが相当にまだ僕の体に残っていて、まだまだこの先もこの仕事が続けられるんじゃないかと勝手に思い込んでいる。



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令和3年3月1日