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厨房思案 第三十五話


「あ」

牛肉というものは真に不思議な食べ物で、特に和牛などは、
お客様が一口召し上がりその旨さにほほえみ、さらにもう一口と進むにつれて段々愉快になって笑い出す、 というような状景を幾度となく見てきましたが、
これは本当になにかそういう幸せのエッセンスのようなものが牛肉の中にあるのではないか、と思っていたら、実はあるそうなのです。
何年か前に牛肉の新聞にその記事があって、「和牛を食べると愉快になって笑い」ということがあったのを思い出しました。 ですから、お客様はなにかそういう成分を口に入れて、これが本当に効いて、楽しそうに愉快にされているのだなぁと、 改めて、その牛肉の持つ不思議な効力というものを実感したのであります。

しかし、焼肉屋をやっている以上、ただそれに頼るばかりじゃぁいけませんから、
まぁ他にも、おいしく食べて頂けるようにするにはどうするか、などとアレコレ考えるわけです。
例えば、”牛肉を焼く炭火はこの位の形で、こうして割って燃焼力をアップしよう”とか
”この牛肉のこの部位はこうしてカットして、この位の大きさで味付けをしてみよう”あるいは
”コレはこうすべきだった”とか、”今度はこういう形でやってみよう”などと
相変わらずアアてもなくコウでもない、のくり返しを日頃やっている訳ですが
なかなかこう、何といいますかスパッと出ないんですね、コレが。名案というものが。
1度でいいからポーンと気持ち良く出ればいいのですが、そう簡単に行かない。
いざ事に臨んで大切な決まり事を決めなきゃいけない時などは、場合によっては苦しんだり迷ったりする訳です。 でもだいたいそういう時は良くないので、決めずにうっちゃっておいたりします。

で、放って置いてしばらく忘れてしまって、ある日何の関係もない時などに「あ」って出るんですね。その放って置いたことのハシッコが。
しかしそれは名案というべき代物でなくて、ほんのはしくれの何てことのない「あ」なんです。
が、忘れないようにうずくまって紙に書いたりする訳で、そのはしくれから少しづつ引っ張り出してきたものが、やがてプロトタイプとなって、 一応できたような、
そんなことが繰り返しあって、今の今まできたような気がするのです。
しかしこの「あ」は厨房の中で出たことがありませんで、実はデパ地下の階段のおどり場であったり、 どしゃぶりの雨の中を犬の薬をもらいに行く途中であったりと、
なんとも妙な所で「あ」というものがひらめくんですからやっかいなことですが、
まぁ、これはこれで楽しいと思います。

さて、いづれこの「あ」が出なくなると淋しいですから
なるべく厨房にいる時以外は外に出て、面白いことや美しいものを見たり聞いたりするように心がけている訳です。
於、本店・厨房
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